えひめ水産イノベーション

~持続可能なえひめ水産イノベーションシステムの構築~

平成24年度文部科学省「地域イノベーション戦略支援プログラム」

環境と調和した免疫能賦活養殖技術の開発
-フジツボ・カメノテの完全養殖を目指して-

愛媛大学 南予水産研究センター 准教授 鶴見浩一郎

愛媛大学 南予水産研究センター 准教授 鶴見浩一郎
 

 昭和56年3月に北海道大学水産学部を卒業後、日本油脂株式会社塗料研究所に入社し、その後に新技術事業団(現科学技術振興機構)に出向。平成21年3月にセシルラボ株式会社社主となり、平成24年7月より現職。専門は海洋付着生物学、防汚塗料研究で、特に付着生物幼生と付着基盤の関係について研究してきた。本事業では、フジツボ・カメノテ幼生の付着行動について研究し、効率的養殖方法を開発し実用化を図りたいと考えている。


 

1.研究内容

 フジツボ・カメノテ類の受精卵は自由に遊泳する幼生期(ノープリウス期、キプリス期)を経て、その後の生育に好適と思われる状態にある岩などに付着し、変態して幼体となります(図1)。これまでに、フジツボ幼生を人工的に均等な間隔で付着させるための種苗板(図2)を作製するとともに、収穫時に完全な形で剥離させる基本技術を開発しました。この技術によりフジツボはエビ・カニと同様に美味な水産物として商品化することが可能となりました。しかし、養殖の実用化のためにはこれまでの特許技術をさらに改良し高度化することが必要です。

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 そこで本研究では、愛媛県における新しい甲殻類の養殖法を確立するために、①種苗板の形状の改良、②幼生の付着効率の向上、③付着に重要な役割を果たしている付着誘引物質(SIPC:Settlement Inducing Protein Complex)の検討、④繁殖および最も美味な時期に出荷するための卵巣の成熟時期(=旬)の管理、⑤免疫能賦活化の検討などに取り組みます。これらフジツボで開発した養殖法をカメノテにも応用するための研究も行います。

 

 

2.研究成果

 愛媛県の南予地域は全国有数のアカフジツボ(Megabalanus rosa)の繁殖地です。この種は過去に三陸沿岸で養殖の検討が行われるなど、国内最大種であるミネフジツボ(Balanus rostratus)に匹敵する商品性があります。そこでこのアカフジツボをモデルにフジツボ養殖の基本技術の実用化検証を行いました。その結果、種苗の生産効率向上のための様々な技術・手法を確立して大量のフジツボ種苗を生産することが出来るようになりました。また、種苗板の形状や素材の検討も進めることで、図2のような海面育成を達成するとともに、1個体ごとの完全な剥離による収穫(図3a~c)が実現出来ることを実証しました。

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 この成果を基に、既に成立している基本特許に加えて、H26年度に上記①、②、③について改良技術の特許を出願しました。しかし、アカフジツボは漁業施設などへの汚損被害が問題となっています。そこで、南予地域におけるフジツボ養殖の対象種として着目しているのがオオアカフジツボ(Megabalanus volcano)です(図4 左)。愛南町周辺におけるフジツボ類の分布調査から、このオオアカフジツボは高茂岬周辺などの外洋に面した岩礁の潮下帯が生息域で、アカフジツボ(図4 右)の生息域には入ってこないのです。

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このオオアカフジツボもアカフジツボと同じ手法で種苗生産できることを確認しました。また、食味についてもアカフジツボと同じく大変に美味であることが判りました。完全剥離したフジツボは傷むことなく生きたまま流通させることが可能で、カメノテと同様に南予の海の豊かさを象徴する、他のどこにもない地元の特産品となる可能性があります。

 

 また、フジツボの機能性物質調査から、軟体部には哺乳類等の免疫能を賦活化する成分が含まれていることを確認しました。美味しいだけでなく、健康食品あるいは魚病に有効な餌料としての可能性があり、今後さらに検討を進めます。

 カメノテについては、世界的に変態・人工付着を達成した報告が未だなく、フジツボに比べ飼育が困難と言われていますが、フジツボで培った飼育技術を基に、キプリス幼生まで生育させることに成功しており(図5)、今後は、付着を達成する飼育方法の技術開発を目指しています。

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3.事業化への展望

 オオアカフジツボおよびカメノテの事業化へ向けて、実証試験を進めております。本種を主体に養殖に適した海域の調査、設置場所や種苗展開時期と成長速度、管理方法、収穫時期などを検討しています。また、これらフジツボで開発した技法を用いてカメノテに関する技術開発にも取り組むことにしております。

 本研究テーマは、無給餌型の環境と調和した甲殻類の新養殖技術を開発するもので、オオアカフジツボおよびカメノテ等を新たな地域の特産品として養殖することで、6次産業化を推進するテーマとの相乗効果が期待されます。

  

 


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