えひめ水産イノベーション

~持続可能なえひめ水産イノベーションシステムの構築~

平成24年度文部科学省「地域イノベーション戦略支援プログラム」
Home 研究開発・事業化 流通システム等の抜本的改革による新たな水産ビジネスモデル構築に関する研究

流通システム等の抜本的改革による新たな水産ビジネスモデル構築に
関する研究

愛媛大学 南予水産研究センター 助教 鈴木幸子

 平成21年3月に東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用環境システム学専攻博士後期課程修了。平成21年4月より近畿大学グローバルCOEプログラム(クロマグロ等の養殖科学の国際教育研究拠点)博士研究員を平成24年度まで務め、民間企業、三重大学特定事業研究員を経て、平成26年12月より現職。専門は水産経済分野で、地域資源を利用した漁村振興などについて研究してきた。本事業では、宇和海の養殖水産物の販売戦略、ビジネスモデルに関する研究を進めていきたいと考えている。


 

1.研究内容

愛媛県は、マダイやブリなどの日本の食卓に欠かせない主要な養殖魚の生産量が全国トップクラスであり、養殖魚類の供給において非常に重要な役割を担っています。しかし、長引くデフレや川下による価格形成などの影響により近年は養殖魚の価格が低迷し、不安定な経営が続いています。そのような状況のなか、宇和海の養殖業においては、価値の高い魚種の販売や経営リスクの分散といった理由から、新たな魚種の導入が行われるようになりました。クロマグロやスマ、ハタ類、カワハギなどがそうです。これらの一部の魚種は既に事業化されており、クロマグロは一定の規模をもつ養殖魚種にして成長しています。また、マグロの近縁種であるスマ(Euthynnus affinis)も大きな発展が見込める魚種として期待が寄せられ、現在、愛媛県と愛媛大学が共同で事業化に向けた研究を進めていています。

 スマという魚種は天然での漁獲が少ないために市場にはほとんど出回っておらず、知名度が非常に低いのが現状です。しかし、養殖して脂が乗ったスマは、マグロとよく似た味になり、試食会などでは高い評価を得ています。マグロとよく似た味になるにもかかわらず、マグロ養殖ほど大規模な初期投資を必要とせず、飼育も比較的容易であることから、閉塞感の漂う魚類養殖業のなかで将来有望な魚種として期待されています。そこで本研究では、スマのような新しい養殖魚種に対して、どのようなニーズがあるのか、どのようなサプライチェーンが必要なのか、どのような出荷・販売体制の構築が有効なのか、などといった課題を定量的分析も交えて研究し、今後の販売戦略を検討していく予定です。

 また一方で、沿岸漁村地域においては、資源・環境の悪化、低迷する魚価、漁業後継者不足・高齢化問題などの課題が山積しています。漁村各地では、付加価値の高い水産加工品の商品化や販路開拓、小規模漁家や漁協による6次産業化への取り組みも見られるようになってきました。実際に愛媛県沿岸漁村では、加工業者による生販連合の事例、フルーツ魚の商品化・販路開拓、漁協女性部の6次産業化への取り組みなど、成功事例が多数確認されています。クロマグロ、スマといった大規模養殖業のモデル構築の研究に加え、地域水産業の活性化に寄与するための6次産業化に関するビジネスモデル研究も同時に進めていきます。

注)鈴木幸子助教は平成26年12月に研究担当者として着任しました。
  次の研究成果は、前任者の天野通子氏によるものです。

 

2.研究成果

水産物産地流通加工企業による養殖ブリ輸出

 現在国内の養殖ブリは、フィレーの形態で北米市場を中心に輸出されており、近年は新たな市場を求めてアジアやEUなど輸出国が多様化しています。愛媛県の企業も、EU、香港、シンガポール、タイ、インドネシア、中東など様々な国に養殖ブリを輸出しています。

 ブリは海外で日本ほど認知度が高くなく、各地の需要はあまり大きくありません。そのため、県内及び全国各地の産地企業は、海外で産地間競争をせざる得ない状況にあります。輸出拡大には、現地での需要を増やすと同時に、個別の産地にこだわらない、オールジャパンでの輸出体制づくりが求められます。本研究では、これまでに愛媛県、鹿児島県、大分県の水産物産地流通加工企業の輸出動向を調査してきました。輸出拡大に向けた輸出ルートづくりには、海外に多様な取引先を持ち、現地の事情も詳しい輸出企業と産地企業や水産物卸売市場を深く結びつける、国内の輸出向け流通ルートづくりが重要であると考えています。

養殖ブリフィレーの輸出先養殖ブリにおける輸出のプロセス

 

香港・バンコクのブリ需要

 東アジア地域では経済成長による一人あたり所得の増加を受けて健康志向や食のファッション化が高まっています。香港バンコクは日本食が広く普及しており多様な価格帯のレストランが展開しています。養殖ブリの販売先は主に高級店や中高級店に位置づけられる日本食レストランです。香港では飲食店だけでなく日系のスーパーマーケットで寿司や刺身、切り身、頭やカマ部分なども販売されています。両地域における養殖ブリの食材としての位置づけは、和牛やマグロの下になります。寿司ネタや刺身での需要としては、マグロやサーモンの下に位置付けられています。現在、一定の需要はありますが、価格によっては現地にある他の魚種に代替される可能性があります

回転寿司のハマチ(バンコク)2014年2月撮影

 ブリは、日本周辺で捕れる魚であるため、香港やバンコクでは日本食以外の利用がほとんどありません。そのため、今後輸出を増やしていくには、現地の人が日本食以外の調理法でブリを利用できるように、働きかけていくことが必要です。

 


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