えひめ水産イノベーション

~持続可能なえひめ水産イノベーションシステムの構築~

平成24年度文部科学省「地域イノベーション戦略支援プログラム」

マグロ類の完全養殖を目指した基盤研究

愛媛大学 南予水産研究センター 准助教 斎藤大樹

愛媛大学南予水産研究センター 斎藤大樹助教

 平成16年3月に北海道大学大学院水産科学研究科博士後期課程修了後、米国パデュー大学リサーチアソシエイト、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター博士研究員、チェコ共和国南ボヘミア大学アカデミックワーカーを経て、平成27年6月より現職。専門は魚類の生殖細胞の研究で、細胞の形成、移動、分化について研究してきた。本事業では、スマの完全養殖に向けた技術開発について研究し、新たな養殖魚の導入により地域活性化に寄与したいと考えている。


 

1. 研究内容

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 スマは実験魚として利用された歴史が浅いため養殖に関する研究の蓄積がなく、基礎的知見を集積する必要があります。本研究では、スマ養殖技術開発および卵から成魚までのライフサイクルを人の手で循環する“完全養殖”に向けた研究開発を行います。特に、本邦近海での養殖クロマグロは夏産卵の人工種苗で、夏季の成長期を経ないため、春産卵の天然種苗に比べて成長が劣り、養殖期間が長くなることで養殖リスクが高まることが挙げられます。

 愛媛大学南予水産研究センター(以下「南水研」)では、海面生簀を用いた天然種苗からの親魚養成、ホルモン投与による人為催熟、陸上水槽での環境制御による成熟誘導、人工授精などの技術開発を行い、天然魚と同時期またはそれよりも早期に受精卵を得ることを目的とし、成長・成熟に伴う生理的現象を分子・細胞学的手法を駆使して研究します。

 本研究は、平成24年7月に文部科学省の地域イノベーション戦略支援プログラムのもと、愛媛大学、愛南町、愛南漁業協同組合との連携でプロジェクトが始まりました。愛媛県では、平成25年10月より『新たな養殖魚種生産技術開発』事業が開始され、愛媛県農林水産研究所水産研究センター(以下「県水研センター」)と南水研が連携してスマ人工種苗生産に向けた研究を進めることとなりました。また、農林水産省の平成26年度『農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業』(実用技術開発ステージ)に『「南予地域発」新規マグロ類「スマ」の早期種苗完全養殖システムの構築』が採択され、国立研究開発法人水産総合研究センターも加わり、さらに研究に弾みがついています。

 

2.研究成果

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 平成26年には、7月にスマの海面飼育生簀から回収した受精卵を用い、共同研究先の県水研センター(宇和島市下波)にて、スマ人工種苗生産育成試験を実施し、人工種苗生産に必要となる基盤情報が得られました。この時に生産された人工種苗430尾は南水研が所有する海面生簀(御荘湾尻貝)に船舶輸送し、平成28年の産卵親魚として飼育しています。この人工種苗の成長を天然種苗と比べると、2ヶ月ほど遅い生まれ月の人工種苗は年末までに十分に成長せず、体重1kg未満での越冬となりました。

 そこで、天然種苗に勝る人工種苗を作るために、平成26年秋に天然1歳魚を南水研西浦ステーションの30t陸上水槽に移送し、飼育環境を制御しながら、翌年の5月上旬までの間、スマの産卵条件(水温24℃、長日周期)になるようにして飼育しました。採卵は、水産総合研究センターとの共同研究のもと、環境制御に加えホルモンによる人為催熟処理を行い、ホルモン投与後、数日で産卵を開始することが分かりました。平成27年には、このようにして得られた卵から人工種苗を生産し、南予地域の養殖企業による試験養殖を開始しました。

(スマの飼育、ふ化仔魚、稚魚の動画を見る。)button movie

 

3.事業化への展望

 スマの養殖技術が確立し、種苗が安定的に供給できるようになれば、品種の多様化による養殖のリスク分散が期待され、さらに小規模経営体のマグロ類養殖への参入が可能となります。また、天然スマは“カツオとマグロの中間のような味”“刺身のもちもち感”“淡い紅色の刺身”などと評されていますが、養殖するとクロマグロに似た味になります。

 今年生産された早期人工種苗は、平成28年度の冬の出荷を目指して、現在、試験養殖が実施されています。今後は、南方系魚種であるスマをより広く宇和海で養殖することができるように、低温に強い品種を作るなどの育種技術開発を進めて行く必要があります。

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平成24年度から26年度までの研究は、南水研 後藤理恵准教授が担当しました。


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