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事業の沿革 |
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同社の創業は大正8年と古く、現在の地で初代是澤大蔵氏の雑貨販売がスタートです。当地は古くから住宅地として栄え、魚屋、八百屋といった専門店が地域住民の台所として機能してきました。同店もそれらの一つで、日常的な触れ合いを通じ、地元住民にとってなくてはならない青果店となっていました。青果店としての地位を築いたのは二代目勘一氏で、その後平成元年に法人化し、三代目として現社長の哲次氏が事業を継承しました。現在では、長男の佳孝氏も加わり、新しい取り組みにもチャレンジしています。
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<店頭の様子>
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経営環境の激変 |
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平成21年に入って、同店を取り巻く経営環境が激変しました。商圏内に高知県のディスカウントストアや松山市の食品スーパーの出店が相次ぎ、11月には香川県の量販スーパーがすぐ近くで開業することになっています。これにより、既存の地元の中堅スーパーや県外資本の食品スーパー・ドラッグストアを交えた価格競争が激化するものと思われ、何らかの対応が必要となってきました。
そこで、同店は、青果物のプロとしての目利きで、品質・価格面ではどの店舗にも負けない気概を持ち、「良い品をより安く」というこれまでの基本姿勢を徹底することにしました。また、生き残りのための最大の武器として、親密感のあるきめ細かな接客対応に更なる磨きを掛けることにしました。
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販売方法と品揃えの工夫 |
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店舗での“待ちの商売”だけでなく、早くから積極的な外販卸に注力し、売上げの安定化に取り組みました。その結果、現在の店舗販売と卸との比率は50対50となり、店舗間競争による売上減少を卸売でカバーできています。
また、宇和島青果市場だけではなく、松山中央卸売市場からも仕入れ、商品アイテムの充実化を図っています。全国規模での集荷機能を持つ松山市場と、地元ならではの特徴ある商品を供給する宇和島市場との補完関係が売場の魅力度を高め、相場の変動にも対応できるようになっています。
5年前からは、日光による鮮度劣化を防ぐため、北向きの店舗を既存店舗前に開設し、併せて消費者利便性に応えるため、関連食品の品揃えを強化しています。
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<関連食品の品揃え>
<旬の果物売場>
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IT化への取り組みと今後の展開
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5年前に、えひめ産業振興財団が運営するインターネット・ショッピングモール「あいあいえひめ」に参加し、ネット販売を開始しました。地元の南予地方の特産品である“みしょう柑(河内晩柑)”や土佐文旦が好評で、全国からの注文が増えるようになり、ネット販売での潜在需要の高さを感じています。今後は、長男である佳孝氏のきめ細かな顧客対応により、ネット販売を強化していく考えです。
また、今後のIT化への取り組みとしては、DM発送やネット上での販売促進策等による情報発信を密にしていくことにしています。
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取材者のコメント |
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これまでは量販スーパーの進出がなく、愛媛県内では比較的に良好な経営環境にあった宇和島市の小売業ですが、状況は一変し、厳しい競争環境に突入しています。何らかの差別化要因がなければ、中小小売店舗としての生き残りは困難となってきています。その点では、品揃え・販売方法での工夫に着目し、早めの対応を行ってきた同店は、“先見の明”があったものと評価します。
最後に、有限会社是沢青果様がますます発展されますことをご祈念申し上げます。
(特別研究員 上田 保) |
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