活用ストーリー(女性創業サロン)
菓子あんず
手作りのお菓子(現在はパウンドケーキ4種)を、電話により受注生産。BSOの「女性創業サロン」で起業に向けて”いろはのい”から学び、開業して約半年が経過。お菓子作りに磨きをかける一方、販路の拡大にもチャレンジしている。

近くに小川が流れ、田んぼが広がるのどかで閑静な住宅街の中に、「菓子あんず」さんはあります。今日インタビューに答えてくださった山下さんは、58歳で一念発起して食品衛生責任者の免許を取り、自宅を改装した加工場で手作りのお菓子を製造販売されている方です。
まだ明確にご自身が創業の考えがまとまっていない中、相談に訪れた女性創業サロン。そこから実際にこのお仕事をスタートさせるまでにどのように後押しをしてもらったのか、お話を伺ってきました。
屋号の「あんず」は、自宅に古くからある杏の木から取ったそうです。 (BY kikiko)
― まずは事業の概要を教えていただけますか? お店のお名前が「菓子あんず」さん。お菓子の製造販売をされているということですね。
はい。商品は今のところ4つなんです。4種類のパウンドケーキ(緑茶・七折梅・紅茶・洋酒)を受注生産しています。
― わぁ~! どれもおいしそうですね! 全部食べたくなります(笑)。商品の「ここがおすすめポイント」というのはありますか?
最初は、洋酒のケーキだけ作るつもりだったんです。実はこれ、出来上がるまでに1ヶ月以上かかるんですよ。
― えーっ! 1ヶ月も!?
焼き上がったフルーツケーキにラム酒を塗るんです。1週間たったらまた開けて塗って、そして閉じてを4回。ラム酒は3種類使います。そうやって1ヶ月かけて熟成させます。出来上がったものは、すごく日持ちもします。
― ますます食べたくなりました(笑)。あと紅茶と、七折梅。
七折の梅は有名だと思うんですが、これは砥部の酒造会社さんから、美味しい梅酒の実を分けていただいています。
― 梅の入ったお菓子、大好きなんですよ~! こちらは緑茶って書いてありますね。抹茶ではなくて、粉のお茶を入れてるんですか?
これは、抹茶パウダーは使わず、久万のお茶をここで挽いているんです。フードプロセッサだと早いけどよくないんで、ゆっくりゆっくり石臼で。
― どれもすごく手がかかってるんですね! そこがまさにおすすめポイントですね。ネット販売とかは考えられてはないんですか?
包装が難しい商品なので、それは考えていません。「菓子 あんず」の名前でFacebookをやっているので、そこに「今日はこの場所に出品しています」と時々情報を出しています。
― 食べたくなったら電話して発注するか、そこに行けばいいんですね~! 販売はいつぐらいからされていたんですか?
去年の秋ぐらいから自分の気持ちの中では開店していました。みなさんに試食していただくとか、そういう感じでポツポツと。
― 在庫は常にあるのですか? また、どこかに卸されているのですか?
電話をいただいてから生産しています。卸先ですが、県内にある渓谷で土日だけ開けていらっしゃるカフェがあるんですけど、そこに置いていただいています。すっごく素敵な所なんですよ~!
― そこで、カフェメニューとして出してもらってるんですか?
いえ、お皿にディスプレイしてとかではなくて、パッケージしたものをお店に置いてもらって、それを買っていただいています。
― 渓谷は秋の紅葉の頃なんか特にいいですね。
では、BSOの「女性創業サロン」を利用してみようと思われたきっかけは何だったんですか? どなたかからの紹介だったのですか?
スマホのサイトで検索してたまたま見付けたんですよ。テクノプラザという場所だけは知っていたんですけど、こういうシステムがあること自体全く知らなくて。よく読んでみると「女性創業サロン」というものがあって、「相談に来てくれていいですよ」って書いてあるから、思い切って申し込みしてみました。それが去年(2019年)の1月です。
― ちょうどそれから1年ですね。スマホでヒットしたの、これもご縁ですねぇ~!
で、そのスマホの内容を読んで、「え? 本当に? タダで相談に乗ってもらえるの?」っていうのが、最初に行くまでの考えでしたね(笑)
― 相談に行く頻度はどのくらいでしたか?
創業前は、月に2回くらい行っていました。とにかくやること全部、基本から分からないことばかりで。でも創業サロンでお話を聞いていくうちに、本当に少しずつ分かってきたんです。
― 「やってみよう」と思ったきっかけは何か理由があるんですか?
どちらかというと「やってみよう」じゃなくて「やれるのかしら」と思って相談に行ってみました。
創業を思い付いたのが一昨年、2018年の11月。
最初は、「なんか考えはあるんですけど、この私の考え、間違ってないですかね?」っていう感じで。「これがやりたいのでよろしくお願いします」というよりは、「こういう考えなんですけど、やっていいんでしょうか? やれるんでしょうか?」っていう相談でしたね。
こんな調子でしたが、とても気長に付き合っていただきました。
― 食品衛生の免許もその後取られたんですか?
これは、年に2回しか取れないんです。まだ起業するかしないか決まっていない頃に、知人から「起業するかもしれないなら、日が決まっていることは整理しておいた方がいいよ」って教えてもらって。それで先に講習を受けて取得しました。
その中では食中毒のことをすごく言われるんです。怖くなってきて「やめようかな~?」という気持ちにさせてくれるぐらい。でもそうやってちゃんと怖い部分も教えてもらえる厳しさがあるということですね。
― 免許を取って、それから自宅の改修ですよね。
そうです。こういう場所は水回り等いろいろ決まりがあります。別建ての加工場を作って、基本的に人は中にいれません。意外と食品衛生の許可が必要ということをご存じない方が多いですが、好きという気持ちだけでやれるものではないですね。
― すごいですね。こうやってすぐに行動に移されて。意外と「何かしたいな~」と思っても、行動に移すのはなかなかね・・・。BSOに相談したから、こう、一歩踏み出せたみたいなのがあったんですかね?
そうなんです。こういうことを知人にざっくりと相談したら、ほとんどの人の反応が「やめておいたら」なんですよね。でも、BSOさんに相談したら、いい形で提案していただけて。
何よりも、すごく寄り添ってくださいましたね。優しく宿題を出してくれて。「これについて考えてみますか?」みたいな。BSOさんとお話をしていく間に自分の気持ちも固まっていったなと。本当に相談に乗っていただいてよかったです。
― 今、やりはじめて半年足らずくらいですが、「これはやって良かったな」と思うことや、「これはどうしようかな」と思ってるようなことはありますか?
良かったなと思うのは、専業主婦をしている時も不満はなかったけど、本当に知らないことがいっぱいあって、それを知るきっかけになったことですね。色んな方と出会えることもあり、世界が広がりましたね。
どうしようかなと思うことは、営業がとっても難しいこと。
― そうですよね。自分から飛び込んで行ってはなかなかね、難しいですね。
そういうことも含めて、世の中の仕事してらっしゃる方って、みんなすごいと思って。きっと断られて山ほど凹んでも、表には見せないだけで、仕事としてやってらっしゃるというのが。
― 一歩を踏み出した山下さんも、すごいと思います! 今後、こんなことをしてみたいということはありますか?
「ここでお茶を飲むのが楽しみだ」っていうような落ち着いた雰囲気のカフェに置いていただけたら嬉しいです。
― 営業は大変だけど、いろんな方との出会いを「世界が広がった」と楽しむことのできる山下さん。きっといいご縁があって、たくさんの方と繋がっていかれることと思います。
これから夢を形にしようと思っている方に、最初の一歩を踏み出す気持ちにさせてくれる、そんなお話をありがとうございました。
Person
山下 千恵子(やました ちえこ)さん
松山市出身
生まれも育ちもずっと松山市。
若い頃からハンドメイドが好きで、58歳から「菓子あんず」を始める。
趣味は家庭菜園。
インタビュー日:2020/1/9
山下さんは、「以前からあたためていたこと」が「今ならできる」と気づいた時点で女性創業サロンに足を運んでいただいたため、展開が早かったように思います。「これからの人生、どのようにありたいか?」も話したのですが、「起業」を含めた生活が「豊かな時間になる」とイメージできたようで、その後は、決断も行動もスムーズにすすみました。
山下さんの長所は、自分でできることは全力で取り組み、不得手なことは協力者にお願いするところ。起業は一人でできるものではありません。これからも協力者と共に事業を拡大していく「菓子あんず」さんを全力で応援していきます!