活用ストーリー(せとうち旬彩館イベントスペース出展支援事業)

支援の種類
せとうち旬彩館の外観写真せとうち旬彩館イベントスペース出展支援事業
「せとうち旬彩館」は、東京都新橋にある愛媛と香川の観光物産を発信するための二県共同アンテナショップ。ショップ内のブースに出展し、短期間で実演販売等を行う。BSOの支援として、出展のサポートや出張費の補助などを行っている。
 
事業者概要

企業組合 津島あぐり工房
代表者が『農家女性として経済的自立をしたい』『次世代に伝統の味を残したい』という思いから、同世代の農家女性と「フレッシュあぐり」というグループを結成し、味噌の製造・販売を開始したのが始まり。平成15年には農産加工所「津島あぐり工房」を稼働。平成24年に法人化し「企業組合 津島あぐり工房」を設立した。
店舗部門の名称は「あすも」。自社で作った加工品のほか、地場産にこだわった総菜等も販売。買い物に不自由している高齢者や山間部の方のために移動販売も行うなど地域に根差した活動をする一方、商品の全国展開にも力を入れている。

インタビュアー(イメージ) インタビュアーが訪問しました

 

「せとうち旬彩館」はJR新橋駅から東へ徒歩1分。オフィスや飲食店が立ち並ぶエリアで銀座からも徒歩圏内であるため、時間帯や曜日ごとに、ビジネスマン・観光客・地方からの出張者・学生など様々な方が訪れます。1階の特産品ショップは営業が10時~20時までで、夕方18時~20時の間は仕事帰りのサラリーマンやOLが、また2階の郷土・せとうち料理「かおりひめ」で飲食を楽しんだあと立ち寄られる首都圏及び近郊の主婦層や高齢者層の方も多くいらっしゃいます。そのショップ横のイベントスペースで出展販売されている企業組合津島あぐり工房 代表理事 山下由美さんに、現地にてお話を伺いました。 (By kikiko)

 

― 先ほどあげまんじゅうをいただきましたが、本当においしかったです! そのほか、今回販売していらっしゃるものをご紹介いただけますか?

せとうち旬彩館ブースの画像こちらの筒状の容器に入っている色とりどりのお菓子が「野菜せんべい」で宇和島産の野菜ともち米を使い一枚一枚丁寧に焼き上げた、野菜含有量が50%以上のせんべいです。
あと、せとうち旬彩館で常設販売していただいている大豆といりこが入ったふるさとのお菓子「元気もん」、地元でまちづくりを目的に活動する仲間が作るどぶろくの「生甘酒」、食物繊維豊富な「はだか麦ロール」、みかん丸ごとが入り上から真珠パウダーをトッピングした新商品「真珠大福」がこちら。そして昔懐かしい味の「あげまんじゅう」はこの場で揚げて提供しています。

― 商品が映える色合いのテーブルクロスや、わかりやすく見やすいPOPを用意されるなど、とても販売方法を研究されていらっしゃるようですね。

POPは描くのが上手なスタッフがいるので任せていますが、全国の展示会などへ販売しに行くのは主に私が担当しています。ただ、販売だけでなく営業も事務的なことも何でもやりますよ、零細企業ですから(笑)。販売イベントには若いスタッフも今後は連れて行こうと思っていますが、こうした首都圏でのお客さんの動向を見たり、おなじみのお客さんがいる地域にはやはり代表である私自身が行かなくてはと思っています。

― 津島あぐり工房さんの歴史を教えていただけますか?

私は21歳で農家に嫁ぎ就農しました。家族とともに「元気になれる農業」を夢見て、除草剤や化学肥料を一切使わない農法に取り組んでいましたが、若いころは自分名義の土地や預貯金がないことに納得がいきませんでした。
そこで「農家女性として収入の上がることで自立したい」という思いから、同世代の農家女性と「フレッシュあぐり」というグループを結成し、味噌の製造・販売を開始しました。平成15年には農産加工所「津島あぐり工房」を稼働。平成24年に法人化し「企業組合津島あぐり工房」を設立しました。
地域に残る伝統の味を受け継ぎ次世代に引き継ぐことも私たちの大きな役割ととらえ、これまでにタレ、みがらし味噌、トマトソース、菓子など様々な地域の伝統食を作ってきました。

― 津島あぐり工房さんは店舗も持たれているんですよね?

あぐり工房外観はい、店舗部門は「あすも」という名前です。自社で作った加工品の販売のほか、地場産にこだわったランチや惣菜を提供しているほか、米粉パンの製造販売も行っています。
また、ご高齢の方や山間部の方など買い物が大変な方に手作りの美味しい食事を直接届けようと、宇和島市~愛南町の地区で移動販売車も走らせています。

― 地域に根差した活動をされていらっしゃるのですね。一方、商品のほうは全国展開されていらっしゃるようですね。

地元だけではなく全国展開できるようにと、農商工連携事業で作った商品が小売店を通じて徐々に全国に広がっていきました。こちらのアンテナショップでも取り扱ってくれるようになり、「元気もん」や激カタの「ビスコッティ」などがじわじわと売れていくなか、”どんな人が買ってくれているんだろう。直接会ってみたい、声を聞いてみたい” と思うようになったんですよね。

― それが、様々な店舗に出向いての店頭販売という形になったんですね。

そうです。だからこの「せとうち旬彩館イベントスペース出展事業」は、アンテナショップに来てうちの商品を買ってくれるお客様と直接話す場であり、ここでどんどん売るというよりも、お客様の動向や商品に対する反応をみるためのテストマーケティング的なものだとも捉えています。

― さきほども、山下さんがFacebookページに事前告知された内容を見てこられたお客様とお話されていましたね。

あぐり工房の商品の画像先ほどの方とは会ったことはないけどお馴染みさんなんです。こうしたお客様の生の声を聞けるのはとても貴重です。うちでは昔懐かしいものを作っているのですが、デザインやパッケージなどを現代風にアレンジすることも大事だということが、お客様の声や反応を通じてわかってきますからね。

― この事業を活用されてみての感想はいかがですか?

この事業は旅費の補助があるので本当に助かります。あと、この事業はもう一つの事業所と合計2事業所で3日間出展するのですが、その事業者の方とお互い助け合いながらチームプレイで販売することが大事だと思います。例えば、お互いの商品をお客様に勧めたり、どちらか一方が手を離せないときにもう一方が試食の準備をしたりとか。

― 毎日のお互いの売り上げ金額を一緒に確認するのも刺激になりますよね。山下さんのご経験上、こちらのような首都圏アンテナショップで販売するにはどういったことがポイントになってくると思いますか?

徒歩だったり、これから電車に乗るというお客様がほとんどなので、ここで売る商品は重いものや瓶類はあまりオススメしません。また、冷凍ものは季節により売れ行きが変わってきます。日持ちするものはいいですね。

― 販売台に敷く布(商品が映える色)や、試食がおいしそうに見える皿も用意するといいですよね。あと、お客様の反応を見ながらPOPもプライスカードも書き直していくこともあるので色画用紙や筆ペン、テープもあったらいいですね。
今後の商品開発の方向性はどのように考えていらっしゃいますか?

あぐり工房の商品の画像加工品はあまりアイテムを増やさずに絞ったうえで販路を伸ばすことを考えていきたいですね。「やめる」ことも大事だと思っています。そして、出来上がった商品は百貨店だとあのパッケージではダメだなとか、これはスーパー向けかなとか、持っていくところによってデザインや量目も変えて、取引先の要望に応えられるような余力を持ちたいと思います。そのためには作るばっかりで頭でっかちになっていてはダメで、たまには出掛けてきて売る、こういうのが大事だと思いますね。

― 最後になりましたが、今後チャレンジしたいことを教えてください。

津島あぐり工房・あすもはおかげさまで農林水産大臣賞を受賞したり、内閣府の賞をいただいたりしたことで、農山漁村の女性における6次産業化の先進事例として全国的に取り上げていただきました。
それに伴い、県内外から「あすもで加工や接客の研修をさせてほしい」という依頼が徐々に増えてきました。宿泊を希望する研修生たちには近隣のホテルを紹介していたのですが、亡き実母の「この家をみんなが集まり憩える場として生かしてほしい」という想いを受け継ぎ、2019年10月に実家を改装した民宿「すなだの家」をオープンし、こちらに宿泊していただくこともできるようにしました。
私たちの経験を失敗談も含めありのままに伝え、全国から集まってくる、これからチャレンジしようとしている人、そして地域を思う人たちのお役に立ちたいと研修メニューに力を入れていきます。

― どの地域にとっても人材育成というのがやはり大事になりますね。

研修生を民宿に受け入れることで、うちの従業員も意識が上がり育つと考えています。従業員の意識が変わると事業も変わってくる。また、最近ではこちら方面に移住を希望する人も出てきていますが、移住したからといって仕事がすぐに見つかるわけではない。民宿事業がそうした方にとっての仕事の受け皿の一つになれればいいと考えています。こうして地域を好きになってくれる人が増えればうれしいですね。

― 出展でお忙しいなか、本日はありがとうございました。

Person

あぐり工房代表者の画像山下 由美(やました ゆみ)さん
企業組合 津島あぐり工房 代表理事

平成7年にJAえひめ南女性部に加入し、JAえひめ女性組織協議会フレッシュミズ部会長、JA全国女性組織協議会理事(フレッシュミズ西日本代表)等を歴任し、若手リーダーとして活躍。平成15年に農産加工所「津島あぐり工房」を稼働し、味噌の加工・販売等を行う。平成24年に「企業組合津島あぐり工房」として法人化し、代表理事に就任。平成21年度「明日の農山漁村を担う女性表彰」農林水産大臣賞、平成23年度「女性のチャレンジ賞」(男女共同参画担当大臣賞)等受賞歴は多数。

 

インタビュー日:2020/1/17~19

支援担当者の応援メッセージ

少子高齢化が加速する宇和島市津島町において、地域のことは地域で解決していくとの強い決意で日々奮闘しているのが、企業組合津島あぐり工房です。ここの経営理念には3つの「つくります」が存在しています。1つ目は.子供たちの未来、2つ目は安心安全な食材、3つ目は高齢者も子供も笑顔になれる場。山下さんを代表とする「あすも」の皆さんは、この3つをつくるために、宇和島の食文化や地産地消に拘り、農家や漁家の方達とともに商品を開発し販売を行っているのです。地域の課題を地域の事業者自らが解決していく事業モデルとして、きのう、きょう、そしてあすも、1歩1歩持続的に発展していってください。

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最終更新日:2020年3月9日