活用ストーリー(チャレンジプラン)

支援の種類
チャレンジプラン(新商品研究開発支援事業)
愛媛の産業・技術資源をもとに、事業者が連携して、新たな商品を開発(デザイン開発を含む)するための調査研究、試作品の製造、その他新たな事業開拓のための調査研究を行おうとするグループをえひめ産業振興財団が認定し、共同で調査研究を推進します。
 
事業者概要

有限会社 トーカイ食品
昭和63年(1988年)に創業した燻製専門の食品加工会社。2014年に兵頭氏が事業承継する。主要な取り扱い商品は魚介類や肉類の燻製加工商品で、主な販路は県内の小売業者が中心であった。BSOの支援を受ける中でホームページの充実にも取り組み、個人に向けたネットショップでの販売も開始。新商品の開発とともに販路拡大にも力を入れる。

インタビュアー(イメージ) インタビュアーが訪問しました

 

松山市中央卸売市場にほど近い問屋街に工場を構える、有限会社トーカイ食品さん。代表取締役の兵頭さんは、事業承継によりこの会社を引き継いでいます。
今回は、「チャレンジプラン(新商品研究開発支援事業)」を活用して、他業種の方たちとタイアップし、新商品の「みかん生ベーコン」を開発されたお話を伺ってきました。   (BY kikiko)

 

―よろしくお願いします。兵頭さんは、先代さんから会社を継がれたとのことですが、それはお父様ですか?

トーカイ食品外観の画像いえ、そうではないです。私が以前勤めていた会社も食品加工会社で、いわゆる取引先様でした。会社の名前も、前任者の方の苗字にちなんだものです。

― よく「事業継承」とか「事業承継」という言葉を聞きますが、それで言うとどちらになられますか?

僕もちょっと調べたんですけどね、どちらも事業を引き継ぐという意味では同じなんですが、「継承」の方は会社だけを引き継いで、引き継いだ人間が違った形で続けていくというのに対して、「承継」は前の経営者の想いを引き継ぐという意味も含まれているそうです。その意味合いでいうと、「事業承継」の方かな?

― 先代さんから、理念を引き継いでやられているということですね。主力の販売商品は、燻製商品。燻製の加工肉と魚も? ですかね。

双方ですね。燻製を主体にしている加工商品ってあまり聞いたことがないと思うんですけど、愛媛県でもうちぐらいしかないんです。
大手の会社でも燻製商品というのはやっていますが、肉と魚と両立させた分野でやっているのは、日本でも多分5社ぐらいしかないそうなんです。

― そうなんですね!

だから会社を引き継ぐ時に、そこが僕は大きな隙間に感じてですね。これをいろんな分野で商売していけば、食卓のメインになる商材ではないと思うけど、例えばおせち料理の一品として必ず入っているものであったり、脇役の商品としてまだ販売ルートはあるんじゃないかなと。

― そうやって燻製商品をメインにされてきて、今回のこの「みかん生ベーコン」を開発しようと思ったのは何かきっかけがあったんですか?

会社を引き継いだ後、ホームページを立ち上げたりいろいろな営業活動をしているうちに、県外の企業さんからも製品開発の依頼を受けることが多くなってきたんですが、その中でやっぱり愛媛県のものを使った特徴ある製品を開発して、競争力を高める必要を感じたんです。

― その開発のために「チャレンジプラン」を申し込みされたということですね?

そうです。”柑橘を取り入れた商品を作りたい”という大まかなプランはあったので、当初、愛媛信用金庫さんに「農家さんや加工業者さんで知り合いはいないですか?」などといろいろ相談していたんです。
その時に「えひめ産業振興財団」さんというのがあって、補助金制度が使えるのではということを教えていただきました。

― では、愛媛信用金庫さんを通じて「チャレンジプラン」を知ったわけですね。

はい、そうです。

― 「チャレンジプラン」というのは、愛媛県の異業種同士が連携してグループを作り、新商品を開発するのを支援するものと聞いているのですが、どんなグループを組まれたんですか?

相談に乗ってもらった愛媛信用金庫さんと当社、それから、実際の消費者からの意見が重要との専門家からのアドバイスで、ターゲットとなる女性客がよく利用する人気の飲食店の三者で組みました。申請を出したのは私になります。

― 商品の表記に「生」が付いているんですが、火を通していないということなんですか?

そうです。加熱も燻製もしていないものです。世界的な標準名としてはパンチェッタと呼ばれるもので、日本名が「生ベーコン」ですね。
今回その「生」というところにこだわっていて、本場のイタリアではサラダにカットしてそのまま入れて食べたりもするんですけど、日本の風習としてベーコンって必ず焼くじゃないですか?よくスーパーなどで売っているものは一度加熱しているものなので、それを二度焼きしていることになるんです。そうすると、せっかくの旨味が逃げてしまうんですよね。
であれば、生の状態でも食べられる品質のもので、お客さんに一度の加熱で食べてもらう方が、肉の旨味は凝縮されたままで美味しいんじゃないですか。
その生の状態で流通させているところも少なかったので、”生ベーコン”というあまり聞いたこともないものと、愛媛を代表する”みかん”の2種類をうまく交ぜ合わせれば、なんか面白いものができそうだよねというところから。

トーカイ食品、代表取締役兵頭氏の画像― 「みかん」は、どういった形で商品に取り入れているのですか? みかんを食べさせた豚が原材料ということでしょうか?

このネーミングを聞くと9割方の人がそう言われるんですが、そうではないんです。愛媛で飼育された豚のバラ肉を原料とするんですが、それに柑橘のピューレを塗り込んでみかんの香りをさせた新しいベーコンというものです。

― 塗り込んでいるんですね。みかんの種類もいろいろ試されたんでしょうね。

試作で何種類も試しました。最終的には温州みかんといよかんに決まりましたが、配合比率にかなり試行錯誤しました。
塗り込む工程のことを「丘漬け」と言うんですが、実はこれに決まる前は、廃業されたみかん農家さんのところから木をもらってきて、みかんの木のチップで焚いてみようというのがスタートだったんですよ。でも仲介に入ってくれる木材屋さんが1回につき1トンの量をさばかないと割が合わないこと、それに思ったようにみかんの香りが付かなかったことから、「路線を変えてみませんか?」ということになって。

― 1つの新商品を生み出すまでに、本当にいろいろ工夫や失敗もされてきたんですね。その商品を開発するまでの資金的な面での支援を「チャレンジプラン」で受けられたということですね。利用して良かったこととか、次、この制度を利用したい方のために、よりよくするために改善できそうなことがあれば教えてください。

改善点というものは思いつかないですね。BSOさんに対して「もう一回やることはできないんですか?」とお話をさせてもらうぐらい、私らとしてはすごくメリットがある取り組みです。

今回「新商品を作る」ことをコンセプトとしてやってきた訳ですが、実際に商品が出来上がってくると、今度はパッケージのデザインであったり、広告であったりと次のステップに移ってくるわけですね。その時に、BSOさんには商売に関する広い分野に専門家の方がおられるので、その都度「次は、ここが課題になったね。」と新しい方が来ていただけるんです。そういったところまでサポートしていただけるというのはすごく魅力的ですね。
受注量を伸ばすことについても、ネットショップの活用のしかた、展示会に出て、トーカイ食品の名前や目玉商品として売るものを一般のお客さんにSNSで拡散していただいたりといった手法なども教えていただきました。

― そうやって次から次へと輪がつながったんですね。東京の「せとうち旬彩館」にも出展されたんですか?

そうですね。試食販売という形でやらせていただきました。みかんベーコンは2日間で100パック全て完売しました。その後、商品の表示を見て直接連絡をいただいたり、「ネットができないんだけど、住所を言うので自宅に送ってもらえないかしら?」と電話をもらったりと、嬉しい反響をいただきました。

― 行ったかいがありましたね! それでは最後に、今後の展望、こんな風にやっていきたいなぁ~ということがあれば教えてください。

トーカイ食品の商品画像百貨店さんで、贈答品関係での掲載を増やしていきたいですね。
あと年末には、5,000円くらいの価格設定で、燻製の商品を主とした1~2人前くらいのおせち料理を限定販売できればと思っています。
自分たちの商品を知っていただくきっかけにもなるし、それの反響がよければ、ネット販売やふるさと納税の限定品とかやらせてもらいながら拡大していければと思います。

― アイデアが次から次へと出てきますね。これからもどんどん愛媛の美味しいものを県内外に発信していってください。今日はありがとうございました。

 

Person

兵頭 興治(ひょうどう こうじ)さん
有限会社 トーカイ食品 代表取締役
松山市出身

夢は馬主になること。
今の工場は前任者から引き継いだものなので、自分の力で新しい工場を作って一人前になりたい。
子年生まれ。

 

インタビュー日:2020/1/22

支援担当者の応援メッセージ

「みかん生ベーコン」。この新商品は飼料に柑橘を混ぜて飼育した豚肉を使っているわけでも、燻製材に“みかんの木・果皮チップ”を使っているわけでもありません。この商品は、燻製前の調味液に柑橘ピューレを一定量加えることによって生まれました。これは何事にも「どうすればできるか、お客さんに喜ばれるか」といった視点で、着眼点や発想を転換して新たな味へ挑戦する兵頭社長の熱意と創意工夫が生み出したものです。
今後は、そのチャレンジ精神で柑橘王国である「愛媛の逸品」と言われるくらいの商品に育てていただくべく、引き続き支援を継続していきます。

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