(要約)
えひめ産業振興財団では、愛媛県の基幹産業である製造業を対象に、IT化への取組状況や今後の課題などを把握し、今後、県内製造業がIT化を進めるに当たっての支援策等を検討するための基礎データを得ることを目的に本調査を実施した。
その概要・要点は、次のとおりである。
1. 調査の概要
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この調査は、愛媛県内の製造業5,000事業所を対象に実施したもので、有効回答数588事業所、有効回答率11.8%となっている。 |
2. 事業所の概要
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回答のあった事業所は、資本金1,000万円以下の事業所が70.6%、従業員数10人未満の事業所が51.9%を占めている。 |
3. 取引先について
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原材料、部品、半製品の調達先について、全て県内の事業所が32.7%となっている。また、販売先については、全て県内が37.0%となっており、販売より調達の方が県外の割合が高い。また、県外における地域別の特徴としては、調達先・販売先ともに四国地域はもとより、近畿地域を取引先としている事業所が多く、販売先では関東地域を取引先としている事業所が多いことから、取引先として四国及び近畿・関東地域が重要な位置を占めていることがうかがえる。 |
4. コンピュータの導入状況について
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コンピュータを導入している事業所は84.2%、従業員30人以上の事業所では100%導入しており、従業員数規模が多くなるにつれ導入率が高くなっているほか、調達先企業や販売先企業などの取引先数が多いほど導入が進んでいる。
一方、未導入の事業所のうち、59.3%が今後も導入予定が「ない」と答えており、小規模事業所におけるコンピュータの導入検討を啓発する必要がある。 |
5. インターネットの活用状況について
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(接続状況)
コンピュータを導入している事業所の中でインターネットに接続している事業所は75.2%に上っている。従業員100人以上の事業所では100%接続しているほか、調達先企業数が多いほど接続している事業所が多くなっている。一方、販売先企業数が多くなるほど接続率が高くなるとは必ずしもいえない。
(インターネット利用の成果)
インターネットを利用している事業所のうち、64.8%がIT化について何らかの成果が上っているとしている。具体的には、「情報収集能力が強化された」が75.5%と圧倒的に多かった。今後については、「情報発信」、「IP電話」や「受発注管理」に活用したいと答えた事業所が多い。
(インターネットを利用していない理由)
インターネットを利用していない理由では、「導入効果がはっきりとしない」が56.5%となっており、今後もさらにインターネットの利用方法や活用効果の啓発を図る必要がある。 |
6. インターネットを活用した電子商取引(EC)について
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(実施状況と今後の取組)
インターネットを利用している事業所のうち、何らかの形でEC(電子商取引)を行っている事業所は40.9%あり、その内容としては、「メールを介した受発注管理・データ交換」が一番多く、次いで「自社のホームページによるネット販売」「ASPなどの受発注管理・データ交換」などが多かった。また、今後の取組方針については、「今まで以上に力を入れる」が53.1%、「現状維持」が46.9%となっており、「縮小する」や「ECをやめる」が全くなかったことからも、企業経営にとってECが重要な存在になってきていると言える。
また、ECに対し、今まで以上に力を入れると答えた事業所では、人材育成やIT環境への投資、EC関連サイトへの参加などにより、EC対応力を一層高めていきたいという意欲がうかがえる。
(EC未実施の事業所が求める支援策)
ECを行っていない事業所に対して、今後、ECを導入するにあたっての支援策について尋ねたところ、「初歩的な知識を理解するためのセミナーの開催や資料の提供」、「ECの成功事例や活用ノウハウの紹介」、「EC導入の個別指導」などを求める声が多く、今後、ECを広く普及するためには具体的な支援策が求められている。
(ECの成果)
BtoB(企業間電子商取引)では、72.2%が成果を上げている。BtoBでは、取引先の新規開拓を除き取引先がほぼ固定されていることから、BtoCに比べ取引関係が安定しており、その分投資に見合った成果が得られていると推測される。一方、BtoC(対消費者電子商取引)で成果を上げているとする割合は44.2%と半数を下回っており、BtoBに比べて低くなっている。BtoCを導入したものの、成果を得られていない事業所も多く、成果を上げていない理由としては「利用頻度が低い」が79.2%と最も多くなっており、利用促進のための商品構成の見直しや販売促進策など、個々の事業所の取組内容に応じた支援が求められる。 |
7. IT化投資について
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IT関連の投資額(ハード機器やソフト開発・購入費等)の規模については、「10〜50万円未満」が36.3%で最も多い。一方、「1,000万円超」が5.0%となっている。従業員数「300人以上」の事業所では、全て「100万円以上」となっており、従業員数の規模と投資額は比例関係にあるといえる。 |
8. セキュリティ対策について
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コンピュータを導入している事業所におけるセキュリティ対策については、24.2%がセキュリティ対策を特に講じていない。また、この未対策の割合はインターネットを接続している事業所では16.6%、ECを行っている事業所では11.2%となっており、インターネットやECを行っている事業所では、ある程度セキュリティ対策の重要性が認識されているようであるが、より一層、総合的なセキュリティ対策の実施を啓発する必要がある。 |
9. IT化支援について
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全事業所に対し、今後、IT化を進める上で望まれる支援策を尋ねたところ、「自社の業務に合ったIT化によるビジネス展開へのノウハウ紹介や支援」が39.4%と最も多く、次いで「税制上の優遇」(38.6%)、「低コストなシステムの提案」(34.1%)の順となっている。
この回答をインターネットに接続している事業所と接続していない事業所に分けると、まず、インターネットに接続している事業所のIT化支援策では、「通信インフラの整備」が上位に挙げられており、インターネットに接続している事業所では、ブロードバンド等を利用したインターネットのより効果的な活用を望んでいることがうかがえる。
一方、インターネットに接続していない事業所では、上記の支援策のほかに、現在インターネットに接続していないものの、「ECのノウハウの紹介や支援」を求める声もあり、昨今のIT化やECの普及状況とその将来性に対して、その関心の高さを示しているものとも受け取れる。 |
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